ニューヨーク~彼女の視線の先にあるもの~
■第1話
「ニューヨークでいってみたい場所があるのよ。」
彼女にそういわれたとき僕は「いいんじゃない、どこでも」なんて、雑誌に視線を落としたままページを繰る手を止めずに軽く返事をしていた。
何の疑念も抱かず、むしろ無関心だと責められてもいいような曖昧な態度で。
それでも僕と彼女の間ではそれはごく自然な空気感だったし、日常的なことだったと思う。
少なくとも僕はそう思っていた。
もしあの時、彼女の真剣な眼差しを少しでも見つめ返していたのなら、そう軽軽しく返事は出来なかったのだろし、彼女の笑顔を失うことにもならなかったのかも知れない。
1ヶ月後・・・。
あの時の誘い文句が、彼女の一大決心の現れだとは気付かないまま、僕は小旅行気分で飛行機のタラップを駆け下りていた。
今思うと、彼女の様子はすこしだけ違っていたのかもしれない。
それでもそのときにはいつもと変わらない様子でぼくの隣にいてくれる彼女にすっかり安心しきっていた僕だった。
■第2話
「ねぇ。私の話、聞いているの?」
目の前の彼女に言われて、僕ははっとした。
「あなたって、いつもそうよね。私の話なんてぜんぜんうわのそら。新聞から視線も上げないし。わたしなんて目の前にいなくてもいいくらいじゃない」
そういって彼女の目からはぽろぽろ涙がこぼれ始めた。
「ごめん、ちゃんと聞いてるよ。この前友達と温泉にいってとまった旅館、すごくよかったんだ、それで・・・?」
相槌をうちながら話を聞いていると、彼女の顔はどんどん笑顔になっていく。
(こんな風に少し相槌をうつだけでこんなに幸せそうな顔をするんだなぁ。あの頃はあいつがなにも言わないのをいいことに、あいつの顔をみて話を聞いていたことなんてあっただろうか・・・)
「ニューヨークでいってみたい場所があるのよ。」
彼女にそういわれたとき僕は「いいんじゃない、どこでも」なんて、雑誌に視線を落としたままページを繰る手を止めずに軽く返事をしていた。
何の疑念も抱かず、むしろ無関心だと責められてもいいような曖昧な態度で。
それでも僕と彼女の間ではそれはごく自然な空気感だったし、日常的なことだったと思う。
少なくとも僕はそう思っていた。
もしあの時、彼女の真剣な眼差しを少しでも見つめ返していたのなら、そう軽軽しく返事は出来なかったのだろし、彼女の笑顔を失うことにもならなかったのかも知れない。
1ヶ月後・・・。
あの時の誘い文句が、彼女の一大決心の現れだとは気付かないまま、僕は小旅行気分で飛行機のタラップを駆け下りていた。
今思うと、彼女の様子はすこしだけ違っていたのかもしれない。
それでもそのときにはいつもと変わらない様子でぼくの隣にいてくれる彼女にすっかり安心しきっていた僕だった。
■第2話
「ねぇ。私の話、聞いているの?」
目の前の彼女に言われて、僕ははっとした。
「あなたって、いつもそうよね。私の話なんてぜんぜんうわのそら。新聞から視線も上げないし。わたしなんて目の前にいなくてもいいくらいじゃない」
そういって彼女の目からはぽろぽろ涙がこぼれ始めた。
「ごめん、ちゃんと聞いてるよ。この前友達と温泉にいってとまった旅館、すごくよかったんだ、それで・・・?」
相槌をうちながら話を聞いていると、彼女の顔はどんどん笑顔になっていく。
(こんな風に少し相槌をうつだけでこんなに幸せそうな顔をするんだなぁ。あの頃はあいつがなにも言わないのをいいことに、あいつの顔をみて話を聞いていたことなんてあっただろうか・・・)